使

『ここは天使が眠る町』

天使が安らかに眠れるように
毎朝子守唄を捧げている。
子守唄で人々は目覚め一日が始まる。
そんな不思議な伝承のある町ミッテベル

天使だけではなく人間だって
不思議な夢を見ることがある。
イメージした人間の見る夢を渡り歩き、
登場人物の一人になる……。
高坂燕は、そんな力をいつからか持ち、
他人の夢を渡り歩くべく一日の大半を
睡眠に費やしていた。

そんな彼がある日、古ぼけた洋館の窓辺に
一人の少女の姿を見かける。
儚げな少女は美しく、
燕は一目で心を奪われる。
彼女のことを知りたい。
その一心で燕はつい彼女に対し能力を
行使してしまうが、それは失敗に終わる。

少女……君原結愛は燕に告げる。
結愛も燕と同じく他人の夢を見ることが
出来る不思議な力の持ち主だった。
ただし、彼女は見る夢を選ぶことはできない。
それどころか、
彼女が毎夜見せられるのは誰かの悪夢。
悪夢に蝕まれた結愛は、
いつしか眠りを拒むようになっていた。

眠らない少女と、眠り続けたい少年。
二人の夢が重なるとき、
伝承は再び動き始めるのだった。

この果ては、君と落ちる微睡みの国。

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